東愛知新聞におきまして三河市民オペラの冒険と題しましての連載⑦

新聞掲載のサイトでございますこちらをクリックしてご覧下さい。下記にも同内容を転記してございます。

【連載】三河市民オペラの冒険〈7〉創造なくして継承なし継承なくして創造なし(西川流四世家元・西川千雅)

「すごいんです。ぜひ見てください」。いろいろな方から、何度も勧められた三河市民オペラ。

「市民◯◯」と聞くと「アマチュアの発表会」「完成度よりは参加者の満足度」「家族や友達が応援」…そんな固定観念を持っていた私に渡されたのが一冊の本「三河市民オペラの冒険(水曜社)」。

その解説には「成功する『市民オペラ』のための、感動のマニュアル。赤字は絶対に出さない!2840枚のチケット完売!素人集団の地元経済人たちの市民オペラ制作の記録」とある。かなりそそられる。

「名古屋をどり」という日本舞踊公演を、80年近く続けている、名古屋に本拠地を置く日本舞踊の流派を預かる身としては、放っておけないコピー。

そして一昨年「アンドレア・シェニエ」で実際に舞台を見ることになり、豊橋駅を降りた。タクシーに台数が少なく、次の女性お2人もそれらしい気配を出しているため「もしかしてオペラですか?」と声をかけ乗り合わせること。道すがら「そんなにすごいんですか?」「とにかくすごいんですよ」と、想像しようがない言葉で熱っぽく話す2人に、いよいよますます期待が膨らんだ。

さて本当の舞台は今どきに言えば「激アツ」だった。本で読んだ情熱あふれる制作陣、一年がかりで稽古した市民参加のコーラスは一人ひとりが演技力抜群、その勢いにのせられて、一流のプロたちによる最高のパフォーマンス。奇跡的な三つ巴で、超満員の観客は大熱狂。

ひとりの「魂の叫び」から始まったムーブメントは、こうして5回目の大成功を収めた。

しかしこの方法にはひとつの問題がある。

大いなる感動の燃料が、その燃料を燃やし切るほどの情熱、その源は「毎回解散」「失敗したらやめてしまう」という背水の陣の覚悟から来るもの。「今しかない」「後がない」「一回こっきり」の絶大なパワー。これは「システム化」「誰でもできる」「普遍化」とは相反する。事業承継にはつきもののジレンマ。

熱力学第二法則「エントロピー」では、水に熱いお湯を入れるといずれぬるくなる。何事も混ざって中和するという科学的法則で、これを社会学になぞらえると、いつまでも熱の高さを維持することはできない。

ここでファウンダーの制作委員長、鈴木伊能勢氏から聞いた言葉が思い浮かぶ。

「文明は残るけど、文化はその人が居なくなったら終わる」

三河市民オペラの文化は残って文明となるのか…。

たとえば各地にこの意思が伝染する、という考えがある。触発されて各地の市民オペラはおろか市民活動がこの「情熱」というものと向き合うと、いま低迷している日本は蘇るのではないだろうか。

我々西川流は「家元」という「熱源」を継承している。しかしながら熱の種類は時代とともに変わる。楽茶碗の家元は「不連続の連続」というらしい。実際に後進にテクニックを教えるのではないが、その意思は継承されていく。

なればこそ、この「三河市民オペラ」にインスパイアされた動きが継承されれば、この情熱を重要視する志が継承され、表面は時代とともに変わっていけばよいのではないか。

最後に西川流に残る言葉を、三河のチャレンジャーたちに贈りたい。

「創造なくして継承なし、継承なくして創造なし」

西川千雅(かずまさ)

日本舞踊家・西川流四世家元。家元の家に生まれ、幼稚園から高校まではインターナショナルスクール、米国ニューヨークの美術大学を卒業、家業を継ぐ。昭和20年より続く「名古屋をどり」主催者を継承。岡崎市「グレート家康公葵武将隊」愛知県「あいち戦国姫隊」などの観光PR隊プロデュースや、名古屋市「やっとかめ文化祭」ディレクター。6大学で客員教授や非常勤講師、健康舞踊NOSSを主宰するため49歳で藤田医科大学で修士取得。

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